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仁醫2(JIN-仁-)最終話南方仁(大沢たかお)讀信的地方,元町公園,位於:東京都文京区本郷一丁目一番。





○○先生へ


先生、お元気でいらっしゃいますでしょうか。
おかしな書き出しでございますこと、深くお詫び申し上げます。
実は、感染症から一命を取り留めた後、
どうしても先生の名が思い出せず。
先生方に確かめたところ、仁友堂には、そのような先生などおいでにならず。
ここは、私たちが起こした治療所だと言われました。

何かがおかしい。
そう思いながらも、私もまた、次第にそのように思うようになりました。
夢でも見ていたのであろう、と。
なれど、ある日のこと。

見たこともない、奇妙な銅の丸い板を見つけたのでございます。
その板を見ているうちに、私は、おぼろげに思い出しました。

ここには、先生と呼ばれたお方がいたことを。
そのお方は、揚げ出し豆腐がお好きであったことを。
涙もろいお方であったことを。
神のごとき手を持ち、なれど、決して神などではなく、
迷い傷つき、お心を砕かれ、ひたすら懸命に治療に当たられる、
仁をお持ちの、人であったこと。

私はそのお方に、この世で、一番美しい夕日を
いただきましたことを、思い出しました。
もう名も、お顔も、思い出せぬそのお方に、恋をしておりましたことを。
なれど、きっとこのままでは、私は、いつかすべてを忘れてしまう。
この涙のわけまでも失ってしまう。

なぜか耳に残っている、修正力という言葉。
私は、この思い出をなきものとされてしまう気がいたしました。
ならば、と、筆を取った次第でございます。

私がこの出来事にあらがうすべは一つ。
この思いを記すことでございます。


○○先生、改めて、ここに書き留めさせていただきます。
橘咲は、先生をお慕い申しておりました。


                          橘咲

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